食後、義雄は白い物体の載った皿を持ってきた。「わあ」と薫子は目を輝かせる。

「ババロアじゃないですか?」

正解、と義雄は笑顔で返す。「パインババロアだよ」

薫子は嬉しそうに復唱した。

「絶対おいしいやつじゃないですか」

嬉しいこと言ってくれるねと笑い、義雄は皿を並べていく。「皆もよかったら」

「あのう……ババロアってなに?」僕は小さく言った。

「ムースみたいなこれです。あと……パンナコッタなんかとも似てますかね」薫子は穏やかに言った。

よっこいしょ、と義雄は自分の場所に座る。

「ムースは、フランス語で泡っていう意味なくらいだからふわふわしてるのが特徴で、ババロアもフランス発祥の洋菓子で、ゼラチンを使ってるからぷるぷるしてるのが特徴。パンナコッタとババロアは似てるけど、パンナコッタは生クリームを使ってるからババロアより濃厚な感じなんだ。ちなみに、パンナコッタは生クリームを加熱したって意味らしいよ」

「へえ……。めっちゃ喋るじゃん」

「いやあ、やっぱり持ってる知識って見せびらかしたいじゃん。かっこよくない? 知ってるって」

「かっこ悪い奴の典型的な思考回路だよ」