僕はそばに置いてあった袋の中を確認した。きゅうりやにがうりを中心に様々な食材が入っている。茂さんと楽しそうに収穫している薫子の姿が目に浮かぶ。

きゅうりを三本取り出し、適当な大きさに切って塩と砂糖と共に密閉容器に入れた。容器を振って冷蔵庫へ入れる。豚肉と卵を取り出して扉を閉めた。

鍋を火にかける。

「いやあ、恭太も成長したなあ」義雄は感心したように言った。

「いつまでいるんだよ」

「いいだろう。かわいい息子の成長した姿を眺めていたいのだよ」

僕は袋からにがうりを取り出した。

「いつも見てんじゃん」

「いくらでも見ていたいものなのだよ」

「赤子でもあるまいし」

「赤子も幼子も、四十代半ばも五十代も、親からすれば愛しき我が子なのだよ」

「どこにも属さないけど」

「ありがとう」義雄はぽつりと言った。洗面台に寄りかかって腕を組む。

「お礼を言われるようなことはしてないよ」

「そんなことない。ここにいてくれる――」いや、と義雄は首を振った。「ここにきてくれただけで充分だよ」

力の抜けた手で包丁を持ち直した。にがうりを適当な大きさに切っていく。

「二人は自分達の勝手で僕がここにいるかのように思ってるみたいだけど、僕はそうは思ってない。むしろ僕は……」ここにいて幸せなんだと続け、熱を持った頬をごまかすように苦笑した。