しかし、結果として薫子がついてきてくれてよかったとも思う。彼女は人を疑うということをしないように思えた。あの日、僕に対して、初めこそ不審者という概念を持っていたが、あまりに呆気なくそれを取り払った。

僕がこうのはなの関係者であると知ればすぐについてこようとした。実際には一度本当にこうのはなの関係者かと言ったが、それでもこちらがそうだと言えばすぐに信じた。

酷暑で禄に思考が働かなくなっていたのかもしれないが、犯罪にでも遭っていたらと想像すると背筋に嫌なものが走った。

直後、改めて疑問が湧いた。公園の隅に倒れているような人間がいながら、なぜ周りの人間はどこにも通報しなかったのか、加えて、十代の少女が家に帰らない状態が――今となっては一年以上も続いていながら、なぜ警察が動いていないのかというものだ。

警察が動かないのは親族らが動いていないためだろうが、その形をとった理由が不可思議だ。

ふいに嫌な想像が頭をよぎった。僕と同じなのだろうか――。