七月の末、新たなそれが手に入った。

僕は洗面台の前で眼帯を外した。鏡に映る自分は双方の瞼を開いているが、視界は眼帯を着用しているときと変わらない。

洗顔を済ませ、眼帯を着ける前に鏡を見た。新しいものは結構違うなと思う。

何気なく、右の目頭から斜めに走る白い傷痕をなぞった。まあいいかと腹の中に呟き、はあと息をついて眼帯を着ける。傷痕も眼帯も、すっかり体の一部のようなものだ。今さら悲観などしない。生きていられただけ幸せだ。


自室に戻り、僕は部屋の掃除をした。掃除が済んでから、携帯電話で時間を確認した。十四時半の時間と共に表示された日付は、もう数日で七月が終わる頃だった。

もう薫子の誕生日か――。十八歳か、と思った。この一年、なにか薫子にしてやれたことはあるだろうかと振り返る。

初めて話した日のことはよく覚えている。倒れているかのような彼女の脈を確認し、心底安心したのだ。

薫子はこうのはなを知っているようだった。僕が近くで食事処を経営する夫婦の息子だと言うと、慣れた手つきで携帯電話を操作して「こうのはなの人ですか?」と言った。

ここにいなければ薫子はついてはこなかったのだろうなと思う。他人の苦悩を深くは理解できない自分が人様になにかできることはないかと考えた末に薫子へ声を掛けたが、結局僕だけでは彼女をどうすることもできなかったのだなと腹の中でため息をつく。