「いや、でも本当にいい感じですよ。そういうモデルさんいそうです」

「なんか恥ずかしいね」と返すと、薫子は「まだ寝ないで下さいね」と笑う。

「いやあ、でも本当に似合いますね。なんか、二次元にいそうです」

いつかトシさんにもそんなようなことを言われたなと思いながらニットを脱いだ。

「ありがとう。これからの冬はこれで過ごす」

「わたしもこれからの秋冬はあの不苦郎君パーカーで過ごします」

「そう。そんなに気に入ってもらえると嬉しいね」

「こちらこそです。恭太君が帰ってくるまで、どっきどきだったんで……」

「かわいいこと言うね。でもそんな気持ちは、もっと大切な人にとっておきな」

薫子は少しの沈黙のあとにくすりと笑った。「やっぱり今日は早く寝ますか」

ちょっとと笑い返すと、冗談ですと薫子は笑った。

「でも、恭太君より素敵な人っているんですかね? 恭太君というか、竹倉家の皆さん以上の方……」

「いくらでもいるんじゃないかな」

「わたしはそうは思えないですけど」

今以上の幸せなんてありませんよと言って、薫子は天井を仰いだ。

「ああそうだ」と僕が言うと、彼女はゆっくりとこちらを見た。