ブレスレットを咥えて手を洗い、手を拭ったティッシュを捨てて部屋の戸を開けた。ブレスレットを着けながら入ろうとすると、頭を叩かれたような音と共に右の眉の上に痛みを感じた。パチンとブレスレットのボタンを留め、空いた右手で痛む箇所を押さえる。

「大丈夫ですか?」と言う薫子へ、「ああ」と苦笑する。

「久しぶりに思い切りぶつけた」超痛いと苦笑して右手を離す。

「大丈夫ですか? 頭、気をつけて下さいね」心配げな薫子の声へ、「ありがとう」と苦笑する。

なんかごめんねと言って、僕は持ってきた作務衣を衣紋掛に掛け、それを小壁に掛けた。

ふうと息をついて布団を敷く辺りに座る。薫子は「そうだ」と言って体の後ろから袋を出した。「じゃじゃーん」とそれを持つ両手を突き出す。

「わたしからのお誕生日プレゼントです」

「……僕に?」

「二月八日は恭太君の誕生日です」

そうだねと僕は笑った。その藤色の袋を受け取ると、薫子の笑顔が見えた。

「クリスマスプレゼントのお礼です」

開けていいかと問うと、薫子は勿論ですと大きく頷いた。

中身は茶色のニットだった。シンプルな模様が何種類か為されている。綺麗に畳まれたそれを広げると、薫子は「あっ」と声を発した。

「大きすぎましたかね」と苦笑する。「それくらいの方が楽だよ」と僕は返す。

休憩室で着替えた部屋着の上から着てみると、薫子は小さく噴き出した。「かわいい」と笑う。

「女の子みたい」と言う彼女へ「おい」と苦笑する。