およそ一か月ぶりに会った藤原君は随分と気分がよさそうだった。一月中に退院したという母親は今、かつてとは別人であるかのように穏やかだという。今では優しくされることも多いと嬉しそうに語っていた。
藤原君が元気であるのは喜ばしいことだが、僕がもっと強くすすめていればもっと早くに彼の家庭が落ち着いていたのだと思うと複雑だった。ほんの数か月で解決するはずのことに、僕は五年以上もの歳月を潰した。
その事実を思うと、彼の母親の気持ちが少しばかり理解できるような気がした。彼女はもしかしたら、息子に許しを請いたかったのかもしれない。
藤原君の純粋な笑顔に胸が締め付けられるようだった。もしも彼が「竹倉君のせいでこんな簡単なことにすげえ時間掛かったわ」とでも言ってくれたなら、当然のように謝ることができた。
しかしああも幸せそうにされると、過去の話を持ち出すことが悪事であるようにも思えてそれができなかった。今幸せな彼にわざわざ苦しい過去を思い出させる必要があるのかと思ってしまった。
僕の無力さ故に苦痛を長引かせてしまったことを謝ることはできなかったが、彼の純粋さを確信した。
藤原君が元気であるのは喜ばしいことだが、僕がもっと強くすすめていればもっと早くに彼の家庭が落ち着いていたのだと思うと複雑だった。ほんの数か月で解決するはずのことに、僕は五年以上もの歳月を潰した。
その事実を思うと、彼の母親の気持ちが少しばかり理解できるような気がした。彼女はもしかしたら、息子に許しを請いたかったのかもしれない。
藤原君の純粋な笑顔に胸が締め付けられるようだった。もしも彼が「竹倉君のせいでこんな簡単なことにすげえ時間掛かったわ」とでも言ってくれたなら、当然のように謝ることができた。
しかしああも幸せそうにされると、過去の話を持ち出すことが悪事であるようにも思えてそれができなかった。今幸せな彼にわざわざ苦しい過去を思い出させる必要があるのかと思ってしまった。
僕の無力さ故に苦痛を長引かせてしまったことを謝ることはできなかったが、彼の純粋さを確信した。