二月に入っておそよ一週間が経過した金曜日、外は純白が厳しい寒さを可視化していた。

「結構前から思ってたんだけど、これってなに?」会計のとき、藤原君は下方を見て言った。橙色の紐が使われたそれをつまみ上げる。

「ストラップ。ご縁ストラップ」僕はレジカウンター越しに言った。「じゃあこっちは?」と新たにつまみ上げられたものには「バッジとか髪飾り」と返す。

「このご縁ストラップってやつは、ご縁だけに五円で売ってるの?」

「そのバッジとか髪飾りもそうだよ。ここにきたお客様とはご縁があるということで、こうのはなを開業した――」

「ああ、植島がかわいいと絶賛するご長寿」藤原君は静かに僕の言葉を遮った。そう、と僕は頷く。

「その人が作ったの。あの方は手先が器用でね」

「でも五円って。利益になってるの?」

「あの方は収益のためにそれを売ってるわけじゃないんだ」

「その金に無欲な部分、見習わなくてはとは思うんだけど、なかなかその気持ちは行動に反映できないね」

「別にいいと思うよ。金銭への欲に自我や理性を奪われなければ」

「やっぱり竹倉君は大人だね。年齢の五つ六つってこんなに大きな差なのかな」

お前が子供すぎるんだとは思うだけで我慢してねと笑い、藤原君は釣り銭の五百円玉とレシートを受け取った。

「またね」と手を振る彼を外で見送り、彼が敷地を出たあとに看板の向きを変えた。「またご利用下さいませ」という文字が縦に並んでいる。