「お待たせ」と言いながら、義雄がお盆を手に居間へ入ってきた。

「お茶漬けと京菜のかき揚げ、京菜のおひたしであります」はい、はいと言って義雄は皿を並べていく。

「すごい、水菜のかき揚げですか。やっぱりお食事処をやっている人は発想が違いますね」薫子は前に並んだ皿を眺めて言った。

「これくらい、料理をする人なら誰でも思いつくよ」そう言ってくれると嬉しいんだけどねと言いながら、義雄は自分の場所に座った。

いただきますと手を合わせてお茶漬けを口に入れると、薫子は「幸せです」と本当に幸せそうな顔をした。

「懐かしい味ですねえ。皆さんと逢った日を思い出します」

「なんだっけ?」義雄が言った。

「義雄さんが、いきなり普通の食事をしたら胃腸が驚くと言って、冷やし茶漬けを作ってくれたじゃないですか」

「ああ、そういえば」なんか調子に乗っちゃうなあ、と義雄は笑った。それはやめてと雅美が返す。