これくらいでいいですかと言う薫子へ全然問題ないと返す。

「お味噌汁のこと、覚えててくれたんですね」薫子は皿に味噌を置きながら言った。

僕は薫子の置いた団子の隣に同じようなものを置いた。

「あの美味はぜひ知ってほしくてね」

「今からすんごい楽しみです。終わりに近づいた頃というと……九月とか十月辺りですか?」

「そうだね。去年の十月に作り始めたから」

「一年程度でできるんですか」

「うん」簡単でしょうと続けると、薫子は感覚が違いますねと苦笑した。


空いた容器の洗浄を始めた頃、茂さんが自室から出てきた。「おじいちゃまおはようございます」と言う薫子へ、彼は「おはよう」と穏やかに返す。

「早いですね」僕が言った。

「草むしりに行こうかと。恭太君は味噌作りかい?」

「ええ。十月に始めたので、天地返しです」

そうかい、と茂さんは頷いた。

「茂さん、今日もなにか採れそうですか?」

「野菜は京菜とか大根かな。果物はオレンジがよかったよ」

「ほう、いいですね」

「きょうなってなんですか?」薫子が言った。「水菜だよ」と僕が返すと、彼女は「へえ、おひたしがおいしそうですね」と楽しそうに言った。