洗顔を済ませて部屋に戻ると、僕は座卓の上で卓上鏡の下に隠してあるお年玉袋を取った。柄付きの折り紙と水引で作ったものだ。表に書く名前は、「薫子」にするか「馨子」にするか迷った挙句、平仮名で書いた。

「今年もよろしくね」とそれを差し出すと、薫子は目を輝かせて静かに受け取った。

「素敵な袋です。ありがとうございます」

「とんでもない」

中身は一生使えそうにありませんねと言う薫子へ、使ってあげてと苦笑する。


僕は台所の流しの下から容器を取り出した。大きな皿を二枚と、年末に買った消毒用のアルコール、布巾と、居間から持ってきた前日の新聞をその周辺に並べる。

「随分と大きな容器ですね」

「まあね」よっこいしょと腰を上げ、僕は洗面台で手を洗った。ティッシュで拭き、台所の収納からビニール手袋を四枚取って再び腰を下ろす。僕は二枚の手袋を薫子へ渡した。