数日後のテレビでは、今年の終わりを数えていた。およそ四十秒で今年が終わる。

「今年もいい年だったなあ」雅美が改めて言った。「皆のおかげね」とトシさんが頷く。

「わたしも今年は幸せでした。いろんな方に出逢いました」

「やっぱり薫ちゃんとの出逢いは大きいね」

「まさかこの歳になって――」

もう五秒よ、と雅美は茂さんの言葉を遮った。以降の数字は皆で数えた。テレビ画面に「Happy New Year」と表示されると同時に、「あけましておめでとうございます」と僕達は声を重ねて頭を下げた。「今年もよろしくお願いします」と続ける。

薫子はふふふと笑った。「なんか素敵ですね、こういうの」

「私が始めてしまったのよ。皆がずっとここにいてくれることが嬉しくてね」トシさんが言った。

「へえ」と頷く声が薫子のものと重なった。薫子は疑問符を浮かべて僕を見た。「なにか聞こえた?」と返すと、彼女は「無理すごいでしょ」と苦笑した。

「人は忘れる生き物だと言うでしょう? さあ、忘れる前に寝るとしよう」

「記憶力に自信があるわけではないですけど、寝るのは忘れませんよ」

さあ寝るよと言って僕は立ち上がった。薫子は苦笑して僕に続き、「おやすみなさい」と残して居間を出てきた。