次の土曜日、僕は薫子とショッピングモールを訪れた。不苦郎わーるどのある場所だ。

薫子は不苦郎わーるどと丸みを帯びた文字を掲げる店に入ると、「幸せの空間です」と目を輝かせた。


「文房具って、かわいいし欲しくもなるんですけど、今はもう使うこともないんですよね」薫子は静かに苦笑した。「このボールペンとか、学生だったら絶対買ってます」

「確かに、学生が終わると使う機会減るよね。使う人は使うんだろうけど」

「恭太君は、シャーペンとか鉛筆の芯ってどの硬さが好みでした?」

「Bかな。消しやすいし」

「ああ、わたしもBです。本当はHBが好みだったんですけど、先生に薄くて読みづらいと言われてからBを使うようになりました」慣れてからはBじゃないと自分でも読めませんでしたと薫子は笑う。


衣類の並ぶ辺りにくると、薫子は「これですね」と嬉しそうに言った。クリスマス時期に贈ったものと色違いのパーカーを手に取り、彼女はどれもかわいいなあと言ってじっくり眺めた。