薫子はふふふと笑った。「ところで恭太君、かわいい字書きますね」

「ああ、小さいとは度々言われたよ」

「なんかでも、恭太君らしい字です。優しい感じ」

「感受性が豊かなんだね」

顔を洗ってくると続けると、薫子はあのと声を張った。

「……どうした?」

「あのう……先にトイレ行っていいですかね。それで目が覚めた感じだったんで」

「ああ、いいよ」

なんかごめんねと言うと、薫子はとんでもないですよと返した。すみませんと言って部屋を出る。


僕は薫子が戻ってきてから部屋を出た。洗面台の前で眼帯を外す。眼帯の下の右目も、少し見ただけではただ傷があるだけの目だ。だけど、やっぱり――。

僕は洗顔を済ませて眼帯を着け直した。目を閉じてふうと息をつく。