薫子が確かに眠ったのを確認してから、ベッドの枕元に袋を置いた。帰宅後すぐ、居間にあったノートの一頁を丸く切り、「お寝坊さんのサンタより」と文字を並べたそれを袋の左下に貼った。


元気な声に名前を呼ばれて目が覚めた。

「サンタクロースがきました」薫子は言いながら袋を掲げた。「不苦郎君の袋置いてってくれました」

「ちょっと寝坊したようだね」

「サンタクロースって、お願いしなくてもプレゼントくれるんですね」

「そうだね」

薫子はふっと笑った。「ありがとうございます」と穏やかな笑みを浮かべる。

僕は苦笑した。「サンタさんの正体とか、絶対知っちゃいけないやつだよ」

ならもうちょっとわかりづらくして下さいよと薫子は笑った。「開けていいですか?」という彼女へ「勿論」と返す。

薫子は丁寧に袋を開けた。そっと中身を取り出す。畳んである紫苑色のそれを広げると、「パーカーだ」と目を輝かせた。

僕は上体を起こした。

「好きそうな色だったから。少し淡いけど」

内側もこもこだ、と薫子は嬉しそうに言った。「普通のやつは持ってたんですけど、もこもこのも出たんですねえ」薫子は「幸せです」とパーカーに顔をうずめる。「ありがとうございます」

「喜んでもらえたようでなによりだよ」