「いやあ、今日もこうのはなは大繁盛ですよ」薫子は部屋に入ってくるとすぐに言った。よっこいしょとベッドに腰を下ろし、不苦郎君を抱く。

「やっぱり、恭太君がいないと大変ですね。もう何度も経験しましたが、月曜日の忙しさには慣れません」

「僕はそんなこと言ってもらえるほど仕事のできる奴じゃないよ」

そんなことないですよ、と薫子は目を大きくした。「恭太君はこうのはなになくてはならない存在です。わたしがお邪魔する前は、月曜日はいつも雅美さんが中心に受注とかこなしてたんですよね。すごいですよ、本当」

「年の劫ってやつだね」

「そうなんですかねえ……。それより、あんなに美しく歳を重ねられるのが羨ましいです。雅美さん、想像ではわたしの母と大して変わらないのですが……」まるで違います、と薫子は苦笑した。

「うーん……。まあ、年齢にしてはそこそこだよね」言いながら、授業参観の度に同級生から雅美の容姿を褒められたのを思い出す。

「やっぱりそう思います? 実の息子さんがそう言うくらいだもん、居候の身であるわたしには憧れでしかないですよね」

あんなお姉様になりたいですと言う薫子へ、僕はただ笑い返した。返すべき言葉は見つからなかった。