僕は薫子の好きなものを思い返した。食べること、濃い色――特に赤紫、露出の少ない服装、不苦郎君――。はっとした。


「お会計、五千三百七十八円になります」

「ああすみません。ラッピングお願いしてもいいですか?」

「はい、可能でございます。無料と有料がございまして――」それぞれこちらのデザインからお選びいただけますと、女性店員はコルクボードに貼られた紙を二か所示した。どちらにも、白、桜、若緑と三色の袋の写真が並んでいる。

無料と有料とでは、右下に描かれている不苦郎君の周りにハートか四つ葉のクローバーが描かれているか否かに加え、袋の口を結ぶリボンが無地か縞模様が為されているかの違いがある。

「ではこれで」と僕は、四つ葉のクローバーが描かれた白い袋の写真を示した。

「かしこまりました。そうしますと……お会計変わりまして、五千五百七十八円になります」

僕は不苦郎君の描かれたレザー調のキャッシュトレイに五千六百円を出した。

「はい、五千と六百円お預かりします」女性店員はレジを操作したあと、「二十二円とレシートのお返しになります」と釣り銭とレシートを差し出した。「ラッピングの間少々お待ち下さい」と言う彼女へ「はい」と頷き、僕はレジの前を離れた。