薫子は部屋にくると、ベッドに座って不苦郎君を抱いた。

「いやあ。こうのはな誕生物語、素敵なものでしたね」

僕は布団を敷き、その上にあぐらをかいた。「そうだね」

「恭太君、知ってました?」

僕はかぶりを振った。「初めて知ったよ」

「訊かなかったんですか?」

「特に興味もなかったし」

「へええ。わたし、知りたがりなんですかね」

「それでもいいじゃない。悪いことじゃないんだし」

「そうですけど……。じゃあ、もう一ついいですか?」

「一つと言わずいくらでも」

「雅美さんから見て、トシおばあちゃまと茂おじいちゃまは祖父母に当たるんですよね」

「そうだね」

「雅美さんのご両親――トシおばあちゃま達の娘さんと、その旦那様はどうしたんでしょう? さっきのトシおばあちゃまの話では、雅美さんのご両親はここに同居してる感じでしたよね?」

「ああ……確かに」

「恭太君、知らないんですか?」

知らない、と僕は苦笑した。

「そうなんですか……。あれですかね、こうのはなの経営も安定してきたことだしと、ここを出たんですかね」

「まあ、そんな感じなのかね。会ったこともないからわからないけど」

「そうなんですか……」