しげさんとは見合いで知り合って結婚した。当時私達は若かった。互いに二十代前半だった。当時すでに長女と長男の二人の子もおり、非常に幸せだった。

贅沢を望まなかったためか、当時のしげさんの家庭教師という職業のためか、金には困っていなかった。しかし現代と同様に、私達のような者ばかりではない。

ある日、小学校低学年くらいの痩せた少年に出逢った。一人でいたために両親について問うと、彼は仕事に行っていると答えた。

その後少年とは頻繁に会った。彼はその度に腹を空かせていた。

やがて彼が学校から帰ってから私達の家にくるようになった。私は簡単な食べ物を提供した。

それが一週間程続いた頃、少年の母親に会った。疲労感を纏う華奢な女性だった。彼女は「お気使いなく」と言ったが、少年は「こらからもお姉さんといたい」と母親に訴えた。「お姉さんのおうちではいろんなものが食べられる」と言った。