目を開けると、「ごちそうさまです」と薫子が声を上げた。びくりとすると同時に「なに食った」と返す。

「恭太君の寝顔です。部屋に入ったとき、一瞬倒れてるのかと思って三年ほど殺されたので五年生き返らせてもらいました」

「二年寿命伸びたね」

「多めに頂戴しました」

今何時、と問いながら僕は上体を起こした。七時半ですと薫子は答える。

「今日までの十七年で一番幸せな三十分でした」

「変態だったか」

「わたしくらいの年頃の女の子は皆、美男さん好きですよ?」

「僕はそんなものじゃない」

「そんなことないです」よっこいしょと薫子はそばで交差させた脚を抱えた。「恭太君はかっこいいです。何時間でも眺めていられます」

「それは変態だ」

「否定はしません、思ったことそのまんま口にするタイプなんで」

僕と足して二で割ればちょうどいいなと思った。

「だけど、恭太君は綺麗な顔立ちしてると思いますよ。なんでそんなに自信ないんです?」

「言われたことも殆どないし……」

「なんで言われないんでしょうね」ああでも、と薫子は呟いた。「普通の女の子はもっと大人しい人も多いでしょうし、言えなかったんですかね」

「どうなんだろう」

「きっとそうですよ」

僕は右目を覆う絹に触れた。「そう……かな」

「そうでなきゃおかしいです。恭太君、漫画に出てきそうですもん」

ありがとう、と僕は笑い返した。トシさんの言葉を思い出した。