ほっこり処 こうのはな〜幸せの砂時計~

駐車場で「ほらまたありました」と声を上げた薫子へ、「大丈夫だから深呼吸して」といい加減な言葉を返した。ボンネットマスコットなどこの頃見ないものだと思っていたがそうでもないなと思った。

「あ、ふくろう君だ」雑貨屋の、梟のグッズが多く並ぶコーナーで薫子は嬉しそうに言った。

「ふくろう君?」イントネーションが妙なその名を復唱した。

「知りません? 不明の不に苦い、新郎の郎で不苦郎君です」

「漢字があるんだ」だから言い方が妙だったのかと思った。「人気なの?」

「すんごいですよ」ネットで観られるんだったかなと薫子は呟いた。「ショートアニメのキャラクターなんですけど、このころんとした姿が愛らしいと、若い女性を中心に絶大な人気を集めてるんです」

「へえ……」インターネットの世界ときたかと思った。これが抗えぬ年齢という名の難関か――。「で、薫子はこの不苦郎君とやらを好きなの?」

「大好きです。もともと梟が好きでして」薫子はずらりと並ぶ不苦郎君を腰を屈めて眺めながら言った。「前にアニメの内容をまとめた絵本も何冊か出たんですが、それ全部買いましたもん」これかわいい、と薫子は大きめなぬいぐるみを抱き上げた。こちらを向き、「ネットには弱いもので」と苦笑する。