日焼け止めを塗り、紫の睡蓮が描かれた白のティーシャツに黒のパーカー、ジーンズという代わり映えしない服装に着替えて部屋を出た。少しすると薫子が部屋から出てきた。黒の七分袖のティーシャツにデニムのワイドパンツという服装だった。緩く桜結びが為された髪飾りを、右耳の上辺りにつけている。

「パーカー、絶対着ると思いました」薫子は自慢げに笑った。「なので黒い服にしてみました」と照れたような笑いを続ける。

なんでも似合うねと言うと、薫子はさあ行きましょうと玄関へ向かった。

薫子は白いサンダルを履いて玄関を出た。「これで百六十センチの壁も突破ですね」と満足げに笑った。

車に向かう途中、薫子は「そういえば恭太君って運転できるんですか?」と言った。純粋に疑問を抱いた声だった。僕は「一定の条件を満たしていれば免許の取得も更新も可能なんだ」と返した。

薫子は「そうなんですか」と静かに頷いた。質問の意図を誤解したかと思ったが、それ以上それに関して言葉を発することはやめた。