「ところで、今日はなにしますか?」

「そうだなあ……特に予定はないんだけど。なにかある? 行きたい場所とか、ほしいものとか」

いえ、と薫子はかぶりを振った。「特には」

「そうか……。ただ家にいるというのも、恋人じゃあるまいしね」

薫子は曖昧に頷いた。じゃあ、と僕が言った頃、玄関の扉が開く音がした。「雅美さん達帰ってきたんでしょうか」と言う薫子へ「そうかもね」と返したが、声や足音が向かってくることはなかった。茂さんが戻ってきたわけでもないようだ。

僕が「おばけかな」と笑うと、薫子はわあと長く声を上げた。

「いけませんよ、そういうの。ホラー、だめ、絶対ってやつです」薫子は息を弾ませながら言った。ごめんごめんと僕は苦笑する。

「まさかそんなに苦手だったとは」

「今ので三年土に還りました」

真面目な顔で言う薫子に、それそれはと僕は苦笑した。

「大丈夫。トシさんが外に出たんだよ、きっと」

「なんでそんな現実的なこと考えられるのにおばけとか言うんですか」

「まあまあ、落ち着いて。どうする、ショッピングモールでも行く? 先月頃にできた新しいのがあるんだ」

「へえ、ショッピングモールですか」懐かしいです、と薫子は言った。