そろそろ時間ですね、という薫子の言葉で休憩室を出た。上で待ってますねと言う彼女へうんと頷いた。

夕飯は鰯の大葉焼きとゴーヤの和え物、かぼちゃの煮物というものだった。

塩味のきいた茹でた枝豆を薫子や雅美とぽつぽつつまんでいると、義雄がお盆に皿を載せてきた。皿には黄色の四角いものが載っており、それには見覚えがあった。

「どうした、また羊羹の味見?」僕は言った。

「前回より美味なはずなんだ。あのあと雅美にいちゃもんをつけられてね。それを基に作り直したんだ」

ふと、薫子があっと声を上げた。「お昼にマンゴープリンを作ってもらって思ったんですが、原材料なら茂おじいちゃまの畑で手に入りますし、マンゴー羊羹なんかもおいしそうじゃないですか?」

おお、と義雄は声を上げた。「いいな、それ。バナナもパインもうまかったし、うまくいくかもしれない」

どうぞ、と義雄は座卓に皿を並べていった。

「あと、色々な羊羹を提案して思ったのですが、あれらの果物でアイスなんかも美味しそうじゃないですか? 難しくもなさそうですし、夏には人気出ると思うんですよ」

「ああ、アイスな」

「ああでも、和ではないですね」すみません、と薫子は小さく言った。

「いやいや、いいんだ。ただ……こうのはなのお客様は大人な女性が多いんだ。そうすると、おれは雅美のイメージかなあ、アイスを好むイメージがないんだ」

「悪かったわね、アイスは歯にしみるだなんて言って」雅美はねっとりとした口調で言った。