洗い終わった食器を拭いていると、「お会計お願いします」と男性の声がした。「ただいま伺います」と言い終える前に、義雄が「おれ行くよ」と残してレジカウンターの方へ向かった。

何枚目かの皿を布巾越しに手に取ったとき、するりと皿が落ちた。足元で派手な音を上げて割れた。「失礼致しました」と言いながら台へ布巾を置き、箒とちりとりを取る。

いやに細かいものが多い破片を集めていると、「竹倉君にもそんなことあるんだね」とカウンター越しに藤原君が言った。

「頻繁にはやらないんだけどね」と苦笑した後、「ありがとうございます、またご利用下さいませ」という義雄の声に「ありがとうございます」と続いた。

「……あの」藤原君が言った。

「ん、決まった?」

「ざる蕎麦」

「了解」レジカウンターから戻ってきた義雄が言った。