「そういえば、まもるはどうしてるかね」義雄が言った。「少し前に恭太も言ってた」と雅美は笑う。

「まあ、きっとちゃんとやってるよ。なんだかんだでいい子だもん」

「そう思いたいけどなあ……」

「なによ、信じてないわけ?」

「そういうわけじゃない。まもるは純粋な奴だ。だけど……」

「まあ、確かに純粋故に困ることはありそうね」

そうじゃなくて、と義雄は苦笑した。なによと返す雅美に、なんでもないと小さく返す。

僕は畳の塵をちりとりに収め、座敷を下りた。

「まも兄……いつか会いたいな」

「そうねえ。どんな人になってるんだろう。もう結婚とかしちゃってたりして?」

「誰目線だよ」

「特別な目線。親族でも知り合いでも、友達でもない」

「まあ……」そうか、と義雄は呟いた。「なんか、冷静に関係を考えるとちょっと複雑だな。親に近い感覚でいたけど、まもるはそうは思ってなかったかもしれない」

家族って不思議なものだよね――僕は言いかけて飲み込んだ。

箒とはたき、ちりとりを片付け、容器にぬるま湯を張り、洗剤を混ぜてその中に布巾を入れた。