「それにしても、随分考えてくれたね。すごいよ、僕なんか全然思いつかない」

「いえ……」薫子は静かに俯いた。小さく笑って顔を上げる。「ただ、ここにいる間に少しでもこうのはなの力になりたいだけです」

「……そうか。じゃあ、本当に三年後には行くの?」

「ええ。まあ、一人で過ごせるようになれば、ほんの少しは大人に近づけるかなとも思いまして」

「薫子はさ、なんでそれほどに大人に拘るの?」僕は躊躇いながら問うた。

ならなくちゃいけないから、と薫子は呟いた。「わたしは、子供だから。いつまで経っても成長しないんです。だから早く、大人にならなきゃいけないんです」早く大人にならないと、と薫子は声を震わせた。

「そうか」と僕は頷いた。「ありがとう」

「やっぱり、いつまでも子供な人って嫌ですよね」

「僕は好きだよ。子供のように純粋で、好奇心旺盛な人」

「子供みたいに弱くて愚かな人はどうですか」

「守ってあげたくなる。全てのことから守ることは難しくても、そばにいてあげたくなる。僕は少し子供のような部分があるくらいが愛らしいと思うよ」

「わたしは、愛らしくいたいんじゃありません」強くありたいんですと微かに続け、薫子は目元を拭った。

十七歳――僕はなにをしていただろうと考える。日焼け止めを塗るのを恥じ入っていたくらいだとは腹の中にこぼした。