「休憩中、色々考えてみたんですけど……」

夜、薫子はベッドから開いたメモ帳を差し出してきた。その頁には、微かに丸みを帯びた文字がずらりと並んでいた。

「メインとデザートがばらばらなのは許してください」と薫子は苦笑する。

一番上では、おはぎと言う文字に続き、こしあん、粒あん、きなこという文字が括弧に囲われていた。味噌おにぎり、焼きおにぎり、黒みつきなこ蒸しパン――などと下に続いている。

「なんか基本的に自分の好きなものを書いちゃってました。でも、味噌おにぎりってめちゃめちゃおいしくないですか? ただ握った白米にお味噌塗ってあるだけなんですけど」

「ああ……。遥か昔に食べたことがあるかないかっていう程度の存在だけど、まあ不味くはないだろうね」

「ぜひ食べてみて下さい。本当においしいんで。あと、蜜と粉はちょっと平仮名にしちゃったんですが、黒蜜きな粉蒸しパンなんかもおいしそうじゃないですか? これはただ想像で美味しそうだなと思ったんですが」

「これは絶対美味しい。でも義雄……」こういうの作れるかな、と僕は苦笑した。「あの人、雅美と出逢ってから和食しか作ってないし、その前は殆ど料理しなかったらしいから」

「ああ……。オーブンさえあれば。雅美さんはどうなんでしょう?」

「あの人も和食にしか触れてない。食べるのも作るのも」

「そうなんですね……。まあそれは別にメニューにできなくても全然構いません。そもそもこうのはなで出すようなものじゃないですしね」どちらかと言うと喫茶店とかで出そうですよねと薫子は笑った。