目が覚めたあと、僕は目も開けずにぼうっとした。時間はまだ早い気がした。

しばらくして目を開け、ベッドの上へ目をやった。薫子はタオルケットを抱いて眠っており、穏やかな寝顔だった。よく眠れているのなら何よりだ。

僕は洗顔を済ませて部屋へ戻った。薫子はまだ寝ていたが、起こすべき時間でもない。

僕は布団の上にあぐらをかいた。布団の足元に固まっている引っ張って脚に掛ける。そのままゆっくりと後ろに倒れ、思考を巡らせる。なにかいい料理はないか――。

ふと、すぐ隣から布が擦れるような音がした。薫子は微かに声を発したあと、なにか言った。お母さん、とも解釈できる音だった。どこか苦しげに眉を寄せる彼女を起こすべきかと考えていると、薫子はふわりと目を開けた。あれ、と呟いた。

「おはよう」

「恭太君……」おはようございます、と薫子は小さく続けた。

「大丈夫、嫌な夢でも見た?」

「大丈夫です」薫子は小さく言った。「いい夢ではありませんでしたが」と苦笑する。

「今、何時ですか?」薫子はきょろきょろと辺りを見回した。「まだ七時半過ぎ」と答えると、薫子は「そうですか」と小さく言った。