夏休みの少し前。
夕暮れ時。
ついさっきまで、涼しい水の中にいたっていうのに、制服を着込んだ身体はもう汗をかいてしまう。今日はもう最後だと地上付近で踏ん張る赤い夏の夕陽を遮る日陰など、付近にはひとつもないからだ。
広い田んぼを分ける通学路。否、農道。
四人で並ぶ影が、わたしたちの前方をさっきからずっと誘導するみたいに先を行く。
ひとつだけダントツ長い影があって、他は細かな差はあれどドングリの背比べだ。形はそのまんま、わたしたち本来の姿を表す。
大輔は背が高く、色黒で細いから、まるでゴボウみたい。黒目も大くてぎょろりとしているから、本当に全部真っ黒だ。制服のシャツとのコントラストが眩しすぎる。
比べるのはかわいそうだけど、帰宅部で読書家の百瀬は豆モヤシだ。頻繁に鼻あてがずれる黒縁眼鏡、色白で、サラサラと憎らしい髪が文学少年を体現している。どの季節を持ってきても、木陰のベンチに佇んで分厚い本のページを捲る姿は、きっと絵画の一部に見えるんだろう。
小夜とわたしは、身長は平均値より少し高いくらいで女子高校生の規格内。だと、その一言に限りたい。水泳部だから、日焼けと戦いながら適度に負けた肌はオマケとして、特出すべきところはない――と小夜は言うけど、小夜は塩素なんかに負けない健康的な黒髪が日本人形みたいで艶やかだ。それに憧れ、わたしも、トリートメントには気を使いながら、髪を伸ばしているけど、どうしても毛先が潤わない。
隣を歩く幼馴染みたちのいいところを目にすると、わたしはいつも置いてけぼりの気持ちでいっぱいになるけど、願望や憧れ、多少の僻みは密かに胸に仕舞いつつ、へこたれない程度の甘い努力をしてみたりもしている。