そんなことがあった翌日、校内の居心地は最悪だった。
周囲の視線はわたしに集中する。指差されて遠巻きに噂されるって気持ち悪い。昨日の現場は登校中だったから、話が回るのが早い。
「……小夜。わたし、校内放送ジャックして話してきたらいいの? 遠巻きってこんなにムカつくもんだったって、久しぶりの感覚だわ」
「まあね。けど逆だったら、みのりもわたしもきっと同じようなものでしょ。他人のトラブルって、不謹慎だけど盛り上がってしまうものだもんね」
「……」
反論は出来ない。真実、事実を知るのもいいけど、無責任にあれこれ推測することは、会話が盛り上がることを恥ずかしながら経験済みで。
結局“それ”知るわたしは、机に顔を沈め、時間が過ぎるのを待つしかないんだ。弁解や訂正を出来るのは、知らない人が可能なんだと、汚染済みのわたしは思ってしまうんだ。
「それに、人様の事情をあんまり広げるのもね」
「うん……それは承知」
「うん、だよね。そういうのわかってるとこ偉いと思うし、好きよ」
「小夜のほうがわかってる」
「みのりからだって学んでる」
こうやって小夜は、自分の持つ優しさを、自分だけの功績にせず、みんなのおかげだと感謝する。……わたしはそんな大そうなこと、教えてあげられてないと思うんだけど、な。
「それに、あと一週間で夏休み。みんな忘れるよ」
「そう?」
「そうそう」
頷かれると途端に落ち着いた。小夜が相手だからというのもあるけど、ちょっと単純かもしれない。
「わかった。ちょっと出てくるねっ」
気力のあるうちに、用をひとつ済ませようと五組へ向かった。