「まーたおまえか、ハルヤマア」
「ゲ、まーたヤマちゃんか」
「なにがヤマちゃんだ、山下大先生だろハルヤマア!」
かかとが踏まれてペタンコになった上履きを全力で踏みしめてわたしはスカートを翻す。周りにいる女の子よりもずっとずっと短いそれがめくれあがってパンツが見えたらどうしよう、なんて言っている暇もないのだ。
生徒指導係のヤマちゃん─────こと山下大先生はとにかくしつこい。スカートが短いだとか髪色が明るいだとかカラコンは禁止だとか、言い出したらきりがない。私は毎日できるだけヤマちゃんとは顔を合わせないように生活しているんだけど、今日は運悪く朝から遭遇してしまった。
廊下を走って、渡り廊下も走って、階段を駆け上がる。まだ下からヤマちゃんが「まてハルヤマ!」と叫んでいるので、仕方なくいつもの社会科資料室へと逃げ込んだ。
「ちょっとかくまって、古田センセ!」
「またおまえか、春山」
扉を開けて素早く閉める。たくさんの本棚が並んだ壁横、掃除道具入れの中に慣れた手つきで忍び込む。それを呆れたように見つめるのは、社会科担当の古田先生だ。