大人なんかに本当はなりたくない。
きらきら光る縁日で売られた大きな大きな子供向けの指輪とか、夕方に音楽と共に回り続けるメリーゴーランドとか、空高く飛んでいく色とりどりの風船とか。
そういうものに惹かれて、手を伸ばして、無邪気に胸を躍らせていたあの時の感情はいったいどこにいってしまったんだろう。どこに消えてしまったんだろう。
気づけばわたしはみんなと同じ制服を着て、同じ髪色をして、同じ靴下を履いて、同じようなものを志して、規則正しく並んだ机のひとつに座っていた。それがいつの間にか当たり前で、おかしいだなんて思ったこともなくて、だけどどこか違和感のようなものがずっとあった。
それを取っ払ってくれたのがあんた。
制服を脱ぎ捨てたのはわたし。
だけどね、本当は知ってたよ。
変わらないでいることが変わることよりずっとずっと難しいんだって。
わたし、知ってたよ。