翌朝、私のほぼ全身を覆っていた黒いしるしは、ひとつのしみも残らず、きれいに消えていた。洗ってもこすっても絶対に取れなかったのに、リョウのかけた呪いが解けたからだろう。
 優子は事件の真相を知らせに警察へ行くと主張したけれど、私が黙っていればいいことだと説得し、北海道へ帰ってもらった。優子の連絡先は聞いていない。彼女とは二度と会わないだろう。
 リョウ。いや、朝香響が成仏した。
 結局、朝香響も優子が好きだったのだと思う。慕っていた幼なじみからけしかけられ、見捨てられたくなくて。つい、死を選んでしまったのだ。
 リョウのいなくなった部屋はがらんとしている。けれど、桃花は片づけが苦手だ。部屋が汚れるのは時間の問題だ。
「ちょっと便利な彼だったんだけど、さようなら」