自分のお墓の所在地を聞いたリョウは、爆笑した。
「北海道? なんでそんな遠くへ。あんな最期で、とうとう親にも嫌われたか」
「違うと思う。騒ぎから、遠ざけたかったんじゃないかな」
「どうだか。北海道にある朝香家ご先祖のお墓なんて、行ったことも聞いたこともない」
 拗ねたリョウもかわいい。一応は年上だけれど、リョウは十八歳のまま、時間を止めている。私は二十。
「あさって、お墓へ行ってくる」
「あさって?」
「明日は、リョウくんが通っていた大学へ行きたいし。強行軍だよ、明日大学。あさって、北海道。飛行機のチケットが、あさっての分しか往復予約できなくて。一晩でも部屋を留守にしたら、私にはリョウくんの呪いが発動するんでしょ」
 今週は、自分の大学へは行けそうにない。
「日付けが変わるまでには帰って来てよ。体調が悪い中、日帰りでお墓参りなんて、ほんとうにご苦労さん。ぼくのお墓とお骨、ご先祖さまたちにもよろしくね」
「しっかり、挨拶してくる」
「前向きだよね、桃花ちゃんって。明るいし」
「だって、部屋の中であがいても、どうしようもない。飛び込んで、会って、話して、破れても傷ついてもぶつかるのみ。そうだリョウくん、幼なじみの優子ちゃんって覚えている? お隣さんで、リョウくんとか親しかったみたいだけど。お母さんが話してくれたんだ」
「優子? 知らない、そんな人。桃花ちゃんの聞き間違いじゃないかな。急いでいたから。あれ、文句ある? 今すぐ、こっちの世界の住人にしてあげてもいいんだよ」
 意地悪い視線を向けられた私は、肝が震えた。基本、リョウは穏やかなので、鋭く睨まれると怖い。
「いい。もう、休むね」
「ふうん、逃げるのか」
「逃げじゃないもん。明日のために、体力つけなきゃ。あさっても、その次も」
「強がっちゃって。さみしがり屋なのに。ストーカー男を彼氏にしたぐらいだし、桃花ちゃんは、誰でもオッケー状態だったんだよね」
「そんなことない、そんな単純じゃない」
「今じゃ地縛霊に取り憑かれて、片足棺桶に突っ込んでいる」
「私が成仏させてあげる」
「その虚勢、いつまで持つかな」