「今ちょうど、そのレディコレに出るための、ヘアメイクの選抜コンテストってのをあちこちのブランドでやってるんだ。俺も先週、本命のブランドを受けたとこ」
私は、足を止めて上坂を見上げた。先週終わって今ここにいるってことは……結果、は?
じ、と上坂を見つめると、上坂は照れたように笑った。
「今日、合格の連絡をもらった。俺、レディコレに参加することになった」
「すごいじゃない! おめでとう!」
「ありがと。……これが条件だったんだ」
「条件?」
「レディコレに、コネはきかない。本当に実力でしか、受かることのない厳しいショーなんだ。だから、レディコレに参加することが出来たらメイクアップアーティストになることを認めてくれる、って、親父と約束してた」
「じゃあ……」
「すげえ仏頂面だったけどな。好きにしろ、って。母さんは喜んでくれた。俺、これで名実ともに、メイクアップアーティストとしてやっていける」
お父さんに反対され、希望の道を一時はあきらめていた上坂。けれど、最後には、反対されても、自分の夢を選ぶことを決めて、高校を卒業した。
そのあとのことは知らなかったけれど、ご両親に認めてもらうことをあきらめていなかったんだ。
よかった……本当に、よかった……
「美希……?」
は、としたように上坂が目を丸くした。
頬を流れていた涙に気づいた私は、慌てて上坂に背を向けてそれをぬぐう。
「何よ、ずるいじゃない。私より先に夢を叶えるなんて……っ!」
ふいに、上坂が後ろから私を抱きしめた。熱い体温をうなじに感じて、私の体温も一気に上がる。
「卒業式の日に言った俺の言葉……覚えている?」
「……うん」
「まだ、誰のものでもない?」
「うん」
あの言葉を守ったわけじゃない。でも、上坂以上に、私の心に入り込んでくる男がいなかっただけ。ただ、それだけ。
なんて……自分をごまかす必要も、今はもう、ないのかな。
「よかった……」
私の肩口で、上坂は盛大にため息をついた。
「ようやく会いに行けると思えば、美希は合コンとかいってるし……」
「は?! 私、そんなもの行ってない」
くるりと体を返して、上坂の正面に向かい合う。腕は緩めてくれたけど、上坂は私を離さなかった。眉間にしわを寄せた上坂が、口をとがらせている。
あ、ちょっとかわいい。
「同級会なんて、ていのいい合コンなの! どっかの男にせまられなかった?」
「……見てたの?」
「やっぱり、そうなんだ」
「確かにつきあってとは言われたけど、でも、私は」
「美希」
とくん。
じ、と見下ろしてくる上坂の顔が、怖いくらいに真剣になった。
どきどきと胸がなる。
触れている体温も、見つめるまなざしも。その一つ一つに、鼓動が反応してしまう。
やっぱり、私をそんな風にさせることが出来るのは上坂だけ。
私は、息をのんで次の言葉を待っていた。
その唇からこぼれるのは、きっと。
「俺と、結婚してください」
「………………………………は?」
「え? ダメ?」
「いや、ダメっていうか……いきなり?」
「いきなりはダメか。じゃあ、言いなおす。俺と、つきあってください」
真面目な顔で言いなおした上坂に、私の目は点になったままだ。予想外の単語が出てきて、一瞬頭の中が混乱したけど……ええと、訂正されたから、とりあえず、交際を申し込まれたと思っていいのかな。
「ようやくお前に会いに来ることができたんだ。どれほどこの日を待ちわびたか……お前を他のやつになんか、触らせない。これからは、俺だけのものになって」
ふわふわとした頭で、その言葉を聞いている。
なんか……これって、現実だよね。……夢、みたいだ。
私は、大きく息を吸って深呼吸をする。
私は、足を止めて上坂を見上げた。先週終わって今ここにいるってことは……結果、は?
じ、と上坂を見つめると、上坂は照れたように笑った。
「今日、合格の連絡をもらった。俺、レディコレに参加することになった」
「すごいじゃない! おめでとう!」
「ありがと。……これが条件だったんだ」
「条件?」
「レディコレに、コネはきかない。本当に実力でしか、受かることのない厳しいショーなんだ。だから、レディコレに参加することが出来たらメイクアップアーティストになることを認めてくれる、って、親父と約束してた」
「じゃあ……」
「すげえ仏頂面だったけどな。好きにしろ、って。母さんは喜んでくれた。俺、これで名実ともに、メイクアップアーティストとしてやっていける」
お父さんに反対され、希望の道を一時はあきらめていた上坂。けれど、最後には、反対されても、自分の夢を選ぶことを決めて、高校を卒業した。
そのあとのことは知らなかったけれど、ご両親に認めてもらうことをあきらめていなかったんだ。
よかった……本当に、よかった……
「美希……?」
は、としたように上坂が目を丸くした。
頬を流れていた涙に気づいた私は、慌てて上坂に背を向けてそれをぬぐう。
「何よ、ずるいじゃない。私より先に夢を叶えるなんて……っ!」
ふいに、上坂が後ろから私を抱きしめた。熱い体温をうなじに感じて、私の体温も一気に上がる。
「卒業式の日に言った俺の言葉……覚えている?」
「……うん」
「まだ、誰のものでもない?」
「うん」
あの言葉を守ったわけじゃない。でも、上坂以上に、私の心に入り込んでくる男がいなかっただけ。ただ、それだけ。
なんて……自分をごまかす必要も、今はもう、ないのかな。
「よかった……」
私の肩口で、上坂は盛大にため息をついた。
「ようやく会いに行けると思えば、美希は合コンとかいってるし……」
「は?! 私、そんなもの行ってない」
くるりと体を返して、上坂の正面に向かい合う。腕は緩めてくれたけど、上坂は私を離さなかった。眉間にしわを寄せた上坂が、口をとがらせている。
あ、ちょっとかわいい。
「同級会なんて、ていのいい合コンなの! どっかの男にせまられなかった?」
「……見てたの?」
「やっぱり、そうなんだ」
「確かにつきあってとは言われたけど、でも、私は」
「美希」
とくん。
じ、と見下ろしてくる上坂の顔が、怖いくらいに真剣になった。
どきどきと胸がなる。
触れている体温も、見つめるまなざしも。その一つ一つに、鼓動が反応してしまう。
やっぱり、私をそんな風にさせることが出来るのは上坂だけ。
私は、息をのんで次の言葉を待っていた。
その唇からこぼれるのは、きっと。
「俺と、結婚してください」
「………………………………は?」
「え? ダメ?」
「いや、ダメっていうか……いきなり?」
「いきなりはダメか。じゃあ、言いなおす。俺と、つきあってください」
真面目な顔で言いなおした上坂に、私の目は点になったままだ。予想外の単語が出てきて、一瞬頭の中が混乱したけど……ええと、訂正されたから、とりあえず、交際を申し込まれたと思っていいのかな。
「ようやくお前に会いに来ることができたんだ。どれほどこの日を待ちわびたか……お前を他のやつになんか、触らせない。これからは、俺だけのものになって」
ふわふわとした頭で、その言葉を聞いている。
なんか……これって、現実だよね。……夢、みたいだ。
私は、大きく息を吸って深呼吸をする。