
作品番号 1557765
最終更新 2019/06/13
全てが真っ黒に淀んだ。
光どころか殆どの色さえも見えなくなった。
それなら、何もかも、全て。
要らないと思った。
『ねぇ、やめよう?』
私の命だって変わらず、無くしてしまう方がいいと思った。
『.......何故?』
私の問いかけに、彼は黒く淀んだ世界で唯一美しい真っ赤な刹那に咲った。
地獄の門前に咲く彼岸花のように凛と、笑んだ。
今まさに命を捨てようとしている人を目の前に、その行為は不適切極まりないものだとは思う。
思う、のに。
紅く染まる世界の中で凛と笑む彼に、私はどうしようもなく興味をかき立てられてしまった。