最初は違った。
物心のついたころからの数年は私だって所謂普通の感覚を持ち合わせていた。
母親に抱かれていたのは紛れもなく私だった。
父親におぶられていたのは確かに私だった。
この世界に飛び出して数年は私だって普通に生きていた。
毎日のご飯が美味しかった。
母親と遊ぶことが楽しかった。
父親から褒められると嬉しかった。
外を歩けば咲いている花を可愛いと思えた。
小さな鳥を捕まえたくて追いかけまわしていた。
公園で出会った同年代の子には自分から話しかけて仲良くなった。
私は溌溂と素直な子供らしい子供だった。
あの頃の私は確かに生きてそこに存在していた。