人の記憶とは厄介なものだ。
人間は一般的に持ちうる脳の、その中の一割しか使われていないといつかどこかで聞いたことがある。
(気になって調べたらそれはただの神話で、実際には常に殆んど十割。寝ている時でさえ優に一割以上の細胞が働いているそうだが)
私はそれを知って一種の苛立ちのような感情を抱いた。
それだけ常にフル活用されている割には人間の脳には不都合が多すぎやしないだろうか。
覚えたいことを覚えられず。
必死に学んで、繰り返して、そうやって習得した知識だって使わなければ忘れてしまうと言うのに。
じゃあ、どうして私は過去のあれやこれやを忘れずに記憶しているのだ?
一体、何のため?
常に全力に近い能力を使ってるのであればもう少し効率的に働いてくれてもいいじゃないか。