私は動いていた十七年の間の殆どを夢の中で存在していた。
夢といってもふわふわと心地がよいとか心が浮き立つような喜びに包まれているとか、そういった温かな夢ではなかった。
それはただ何も感じさせない夢。
私は起きている間にも何かを実感するということが殆ど無かった。
意識は常に夢の中。
何も感じない。
何も思わない。
何が起きてもどこか他人事。
あるのは漂う真っ黒な霧ばかり。
それがかかっているせいで私は私が経験しているという実感を得ることが出来なかった。
それでもその霧のおかげで私を私から切り離すことが出来ていた。
そんな存在に意味が無いと悟ったのは青春真っ盛りであろう高校二年の春だった。
あの日。
私は私をも捨ててしまおうと学校へと向かった。
そこで出会った彼は背筋をピンと伸ばして咲いていた。