今思い返しても、これは運命の出会いだった。
人生万事が塞翁が馬。
私を取り巻く全てのご縁に心から感謝!!

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 ガタンゴトンと揺れる車窓の景色が、一戸建てが建ち並ぶ住宅街から、背の高いビルへと変わってゆく。広い空が段々と狭まり、目に入るのは人工的な壁。それすらも地下鉄に乗ったら闇に掻き消えた。

 乗り換えること数回、わくわくしながら降り立った初めての広尾駅で、あたりを見渡した私は拍子抜けした。
 想像より地味だったのだ。いや、地味というのは語弊がある。ただ、私が思っていたのとはだいぶイメージが違っていた。

 私は広尾を、表参道や銀座のようなお洒落なブティックが建ち並ぶ場所なのだと勝手に思い込んでいた。しかし、実際の広尾駅はもっと、地元に密着した雰囲気が漂っていた。
 改札口を出てすぐの場所に昔ながらの商店街があり、幹線道路の両側に大手スーパーなどが入った小規模なショッピング施設があった。そして、駅の改札出口に沿った大きな幹線道路沿いには、大きなマンションやビルが建ち並んでいる。

 どっちに行こうか迷って商店街に入った私は、入ってすぐの場所で見つけたコーヒーチェーン店で、今お勧めのサクラクリームのラテを頼んだ。甘くしたミルクコーヒーの上にたっぷりと絞った生クリーム。その上には桜色のチョコチップを乗せて。
 それを片手に駅前から続く商店街の中をぷらぷら歩く。両側に3メートル位の高さの街路樹が植えられた通りは、歩行者天国になっていた。さほど広くは無い通りに等間隔に建つ街灯には商店街の名称が刻印され、両脇には飲食店は雑貨屋さん、服飾品店が立ち並んでいる。