朝起きて窓を開けると少しだけひんやりした風が頬を撫でる。ついこの前まで日中の気温が3日連続35℃超えが、とか、どこぞで過去最高気温を更新したとか言ってたのに、いつの間にか秋の足音は着実に近づいて来ていた。私はしばらく窓を開け放って空気の入れ替えをすると、パタンと窓を閉めた。
「夏も終わりかー」
ベランダを眺めたまま独り言ちた。物干し竿にぶら下げた雑巾がゆらゆらと風に揺れている。ここに住み始めたときはまだ春だったのに、時が経つのは早いものだ。
ぼんやりしているとスマホがピピッと鳴る音が聞こえ、慌ててアラームを止めた。時刻は『AM 7:00』を示している。
「やばっ、遅れちゃう!」
大急ぎで顔を洗い、パジャマ姿から私服に着替えた。
今日は日曜日。いつもなら9時近くまでのんびりと寝ているけれど、今日はそういうわけにはいかない。何故なら、今日はお出かけする予定なのだから。その行き先は『目黒のさんま祭り』だ。
実は、目黒駅は私の住む場所からさほど遠くない。距離で言うと2キロ位。自転車なら10分でいけるし、頑張れば歩ける距離なのだ。
先日テレビの夕方のローカルニュースでその存在を知り、行かなかったことを悔やんでいたら、前に座る尾根川さんが目黒のさんま祭りは2回行われることを教えてくれた。1回は目黒駅前の周辺で行われる、私がテレビで見たものだ。もう1回は目黒川沿いにある、目黒区の区民施設で行われるらしい。
この2つは全く別の独立したお祭りのようだが、どちらも無料でさんまの配布が行われる。そして今回のものは区の施設で行われるが、区民以外も参加可能と聞き、参加することにした。
だって、気仙沼産のさんまの炭火焼きだよ?
無料だよ?
絶対に美味しいに決まってる!
それに、さんまに多く含まれるDHAなるものは記憶力向上効果があるらしいから、宅建の勉強をする今の私にはぴったり!
なんて、後付けの言い訳も思いついた。
事前にホームページで10時過ぎから5000匹のさんまが配布されることを把握していた私は、9時過ぎには家を出発し、5分前の10時ちょうどには到着した。しかし、そこで言われたのは思いがけない言葉だった。
「おねーちゃん、悪いね。もう配布数量終わっちゃったんだよ」
ねじりはちまきをした日焼けしたおじさんの言葉に、私は目が点になった。
「配布って、10時からですよね?」
「そうだよ。電車の始発で来て待ってる人も多いからねー」
「そうですか……」
なんと言うことだ。要するに、私は出遅れたらしい。目の前には広場で炭火焼きの準備をする人達。なんてこったい。今からここで5000匹のさんまが美味しく焼かれるというのに、お預けとは!!
項垂れる私に、ねじりはちまきのおじさんが申し訳無さそうに眉じりを下げた。
「あっちの建物の裏で屋台やイベントもやってるから、よかったら見て行ってよ。楽しめると思うよ」
「はぁ……ありがとうございます」
いや、もう燃え尽きた。
朝っぱらから燃え尽きたよ。
休日の朝早くに起きて、やる気満々でさんまを食しにてくてくと歩いて来たのに……まさかのお預け状態とは!!
「夏も終わりかー」
ベランダを眺めたまま独り言ちた。物干し竿にぶら下げた雑巾がゆらゆらと風に揺れている。ここに住み始めたときはまだ春だったのに、時が経つのは早いものだ。
ぼんやりしているとスマホがピピッと鳴る音が聞こえ、慌ててアラームを止めた。時刻は『AM 7:00』を示している。
「やばっ、遅れちゃう!」
大急ぎで顔を洗い、パジャマ姿から私服に着替えた。
今日は日曜日。いつもなら9時近くまでのんびりと寝ているけれど、今日はそういうわけにはいかない。何故なら、今日はお出かけする予定なのだから。その行き先は『目黒のさんま祭り』だ。
実は、目黒駅は私の住む場所からさほど遠くない。距離で言うと2キロ位。自転車なら10分でいけるし、頑張れば歩ける距離なのだ。
先日テレビの夕方のローカルニュースでその存在を知り、行かなかったことを悔やんでいたら、前に座る尾根川さんが目黒のさんま祭りは2回行われることを教えてくれた。1回は目黒駅前の周辺で行われる、私がテレビで見たものだ。もう1回は目黒川沿いにある、目黒区の区民施設で行われるらしい。
この2つは全く別の独立したお祭りのようだが、どちらも無料でさんまの配布が行われる。そして今回のものは区の施設で行われるが、区民以外も参加可能と聞き、参加することにした。
だって、気仙沼産のさんまの炭火焼きだよ?
無料だよ?
絶対に美味しいに決まってる!
それに、さんまに多く含まれるDHAなるものは記憶力向上効果があるらしいから、宅建の勉強をする今の私にはぴったり!
なんて、後付けの言い訳も思いついた。
事前にホームページで10時過ぎから5000匹のさんまが配布されることを把握していた私は、9時過ぎには家を出発し、5分前の10時ちょうどには到着した。しかし、そこで言われたのは思いがけない言葉だった。
「おねーちゃん、悪いね。もう配布数量終わっちゃったんだよ」
ねじりはちまきをした日焼けしたおじさんの言葉に、私は目が点になった。
「配布って、10時からですよね?」
「そうだよ。電車の始発で来て待ってる人も多いからねー」
「そうですか……」
なんと言うことだ。要するに、私は出遅れたらしい。目の前には広場で炭火焼きの準備をする人達。なんてこったい。今からここで5000匹のさんまが美味しく焼かれるというのに、お預けとは!!
項垂れる私に、ねじりはちまきのおじさんが申し訳無さそうに眉じりを下げた。
「あっちの建物の裏で屋台やイベントもやってるから、よかったら見て行ってよ。楽しめると思うよ」
「はぁ……ありがとうございます」
いや、もう燃え尽きた。
朝っぱらから燃え尽きたよ。
休日の朝早くに起きて、やる気満々でさんまを食しにてくてくと歩いて来たのに……まさかのお預け状態とは!!