その日の晩、イマディール不動産の皆さんは広尾駅のすぐ近くにあるナポリピザのお店で私の歓迎会をしてくれた。店内に本格的なピザ釜のある、明るい雰囲気のお店だ。

「うわ、すごいモチモチ!」

 店内で職人さんがクルクルと皿回しのように回しながら作ったビザは、手に乗っけると形がぐにゃりと崩れるほど薄い。けれど、くるりと巻いて一口食べると、もっちりとした食感とトマトの酸味の効いたソースが口いっぱいに広がった。何だこれ、今まで食べた中で1番美味しいかも。

「ここ、雑誌にもよく紹介されるピザ屋なんだよ」 
「へえ」

 綾乃さんのコメントにも納得の美味しさだ。これは、これまでの私のピザの常識を覆したかもしれない。エビのフリットや、カプレーゼも美味しい!

「おまたせ。遅れて悪い」

 美味しい料理と会話を楽しんでいると、ふと後ろから声がして、私は振り返った。そこにいたのは、自分より少し年上に見える男の人。スーツの上着を片手にかけて、ネクタイを楽に緩めている。短く切られた髪は整髪料で上に上げており、切れ長の瞳が涼し気な印象の、ハンサムな人だ。

「さくらぎぃ、遅い! 全然オフィス戻って来ないし、何してんのよ。美雪ちゃんの歓迎会なんだから! あんたが指導役なんだよ」

 少し酔いの回った綾乃さんが文句を言うと、「ごめん、ごめん」とその男の人は苦笑しながら両手を胸の辺りに挙げて降参のポーズをして見せた。

「俺、桜木さくらぎ寛人ひろと。藤堂さんの指導役させて貰います。よろしくね」

 こちらを見てニコリと微笑む笑顔は柔らかく、とても優しそう。

「藤堂とうどう美雪みゆきです。よろしくお願いします!」

 私はその場でバッと立ち上がり、深々と挨拶した。私の慌てたその様子がおかしかったのか、まわりはどっと笑いに包まれた。