私は日曜の礼拝に通う様なクリスチャンじゃないから、普段は賛美歌とは無縁。教会で賛美歌を歌うのは結婚式くらいだ。
だから頭の中には、賛美歌イコール結婚式の図式が出来上がってる。
幸せそうな花嫁、祝福の拍手、笑顔と花の溢れる時間……――それは、眩しい世界。
憧れの向こう側。
本当はそこに居たかった。彼の横で笑って。
確かに嫉妬はないけど、何よりも――羨ましい。
もしほんの少し私が勇気を出せていたら、あそこにいたのは自分だったかもしれないのに……。
切ない気持ちが胸に刺さって痛かった。
私の涙は一滴だけ落ちたのみで、それ以上歌詞の文字を濡らす事はなかった。ただ、視界がぼやけたまま。
唇を噛んで歌わないのには意味がある。音を出した途端に、数年分の想いが涙に変わってしまう気がしたからだ。
零れたらすぐには止まらないと思う。深く焦がれたつもりはなくても、数年の重みはそのまま正直に現れるはずだもの。