「……え?」

「それとも、無かった事にしようとか思ってます? トシヤ先輩の事好きだった気持ち。……ま、俺はどっちでも構わないんですけどね。でも先輩、ちゃんと最後まで気持ちに向き合わないと、終われませんよ?」


黙って歌詞カードを見る私の耳元へ、遠野君が小声で伝えてきた。


「素直になればいいのに。大丈夫ですよ、もし先輩が辛くて泣いても、俺なら上手くフォロー出来ますから。トシヤ先輩達にはバレないように」


それは意外な程、優しい音で。

悪魔の囁きだ……そそのかされてたまるか――と思ったのに、気が付けば涙腺が緩んでしまっていた。

気を張り続け、疲れ弱ってる時に、その優しい声と言葉はいかがなものか。

やっぱり遠野君には悪魔気質な所があるらしい。

それも、なかなか堂に入ったものだ。

歌詞の文字に水玉がひとつ……落ちた。