遠野君は「はいはい」と頷いた。口元が緩んでいるところを見ると、私が強がりを言っていると思ってるらしい。

強がりじゃない

相手にではなく自分へその言葉を向けた。

……私は本当に二人を祝福したいと思ってるもの。

嫉妬?

そんなものは全く無い。

そこまで黒い感情を持つほど深く恋する前に、私の恋は終わったのだから……。


「じゃあ何で賛美歌歌わないんですか?」

「何よ。歌わないから祝福してないとでも言いたいの?」

「……いや、素直じゃないなあって思って」


クスクス笑いながら遠野君は立ち上がった。

二度目の賛美歌斉唱――。

私も立ち、今度は下を向く。


慈しみ深き……の歌詞がついた旋律は、親戚や友人の式で過去何度も耳にし、歌った事があった。

柄にもなく、式の雰囲気と賛美歌のメロディーに感動して泣きそうになった経験だってある。

……だからダメなのだ。

私は歌えない。

そういう覚えがあるからこそ、今日は特に。


「忘れる為に来たんでしょ?先輩」