(必死に隠し続けた片想い。誰にも知られずに終わりに出来ると思ってたのに)
呆然と固まった所で、新郎が緊張顔で入場してきた。
新郎は、私の同期。
新婦は、私の後輩。
お似合いの二人だ。アウトドア好きの男らしい彼は、おっとりしてて可愛いらしい家庭的な子を選んだ。
低い身長、長い髪、雑誌のお手本みたいなナチュラルメーク……素直な性格。
ここまで自分と正反対のタイプをお嫁さんに選ばれたら、失恋も逆に清々しい。
うっかり告白しなくて良かった。
親友+同僚ポジションを崩さずにいて良かった。
これで私が忘れられれば全部無かった事に……。
「ほら先輩、立って」
囁き声と同時に腕が引っ張られ、無理矢理起立。
横を見ると遠野君が呆れ顔でいた。私がボーっとしてる間に新婦の入場も済み、式は最初の讃美歌斉唱にまで進んでる。
オルガンの音色が響き始める中、遠野君はこっそり話しかけてきた。
「平気ですか?」
「なにが?」
「“何が”って……」