「ストップ!」
周りを気にしながら、私は遠野君の暴走を止めた。
なんだこの男は!
場を考えて物を言え!
「どうしてそんな事っ」
「俺、昔から朝顔の観察とか結構好きだったんですよねー。数ミリの差まで調べるの、超楽しみで」
「は?」
ミリ単位?
随分マニアックな観察。凄い奴だわ、遠野……
いや、問題はそこじゃなくて。
「何の話よ、それ」
「勿論、先輩の片想いの話を。あ、分かり辛かったですか? 俺には、トシヤ先輩への想いを日々募らせる先輩の様子が、手に取る様にわかりましたよって話です」
「嘘……!」
「誰にもバレてないと思ったのにまさか……って、今考えてます?」
ニヤニヤ笑う後輩を見て、私は頭を抱えた。
「俺にはバレバレですけど、他の皆は気付いてないと思いますよ? 良かったですね先輩。口止め料が俺の分だけですんで」
「……悪魔か、アンタは」
……なんて事だ。
数年間の私の努力が、こんなエセ理系朝顔野郎によって水の泡に……!