「何? 遠野君。それ何の話なの、チャンスとか小さな幸せとか……」


好きな人と結婚した彼が掴んだのは確かに《幸せ》で。でも、それに大きいも小さいもあるんだろうか?

私には、結婚は十分大きな幸せだと思えるんだけど――。

遠野君は意地の悪い笑みを浮かべながら、「先輩には教えてあげない」と言った。


「悔しかったら自分で考えてください」


随分挑発的だ。

しかも勝ち誇った様な顔してるのは何故……?


「ま、俺にとっては願ってもないチャンス到来って感じですかね」

「それヒントな訳?」

「さあ?」


遠野君がニヤリと笑った所で、周りからわっと歓声が上がる。

高く舞う真っ白なブーケが見えた。

 
「あー、ほら先輩。やっぱり参加すれば良かったのに。アラサーでお局の先輩がいたら、遠慮してみんな譲ってくれたかもしれない――」

「うるさいっ!」


再び脇腹をつついてやったら、やっぱり遠野君の反応は同じだった。ビクッと伸びる細身の長身。