「いいじゃないの。幸せの最高潮の中にいるんだから当然でしょ。遠野君も素直に祝福してあげなさいよ」
「へぇ、先輩がそれ言うんだ。一番素直じゃない人が」
「うるさいっ」
――この悪魔め。本当に一言多いんだから。
憮然とした私にクスクス笑う遠野君は、独身女子注目のイベント“ブーケトス”に集まる女性達を指さし「ほら、先輩」と言った。
「良いんですか? 参加しなくて」
「私はいいの。ああいうのは若い子が参加するものよ」
新婦が私に手を振ってるのを苦笑いで受け止めた。参加してと誘ってるのだろうか?さすがにそのお願いは聞けないと、首を振って相手に答える。
「それに、もし私が貰っちゃったら、次に結婚出来るっていうジンクスが確実に崩れちゃうし」
「したくないんですか? 結婚」
「私、失恋したばっかりだよ? ブーケ貰っても今は複雑なだけだって。しかも失恋した相手の彼女からって……」
「そんなもんですかね」
「そんなもんよ」